• 6月 24, 2025
  • 6月 20, 2025

🦴 骨粗鬆症についてのまとめ①(健診・骨折予測など) 骨粗鬆症について知識を整理しましょう

①骨粗鬆症と健診について

骨粗鬆症は、高齢化社会において深刻な健康課題の1つであり、特に70代女性の約50%が罹患していると推定されています。さらに、女性の生涯骨折リスクは非常に高く、大腿骨近位部骨折や椎体骨折は要介護の主要因となります。

骨粗鬆症は自覚症状が乏しく、骨折をきっかけに初めて診断されるケースが多いため、早期発見のためには健診によるスクリーニングが極めて重要です。


🧪 健康診断による骨粗鬆症スクリーニングの現状

骨粗鬆症健診は、2005年(平成17年)から「健康増進法」に基づき40~70歳の女性を対象**に、市区町村が任意で実施しています。2022年のデータによると、

  • 全国平均の健診実施率:62.8%
  • 健診受診率の全国平均:5.5%

と、まだ十分とは言えません。自治体によっては実施すらしておらず、受診率0~70%と地域差も大きいのが現状です。


📊 受診率・精密検査率の実態

  • 受診者の約3割が「要精密検査」または「要指導」に該当しており、潜在的な骨粗鬆症予備群が相当数存在します。
  • 特に70歳代では精検が必要な人の割合が35%を超えています。
  • しかし、「精検未受診」や「未把握(受けたか不明)」の割合も高く、健診後のフォロー体制の不備が問題となっています。


✅ 結論:骨粗鬆症健診の強化は“転ばぬ先の杖”

  • 骨粗鬆症は、「沈黙の疾患」であり、症状が出たときにはすでに骨折を起こしていることが多くあります。
  • 健診による早期発見・早期治療は、個人の健康維持のみならず、社会全体の医療・介護費の抑制にもつながります。
  • 骨折の予防は、認知症・脳血管疾患と並ぶ重要課題であり、骨粗鬆症健診は社会的投資としての価値を持ちます。

②骨粗鬆症の自己チェックにも使える「FRAX」について

骨折リスクを数値で見える化するツール。この知識をもっておくと得することもあるかもしれません。

FRAX(Fracture Risk Assessment Tool:骨折リスク評価ツール)は、今後10年間に骨折を起こす確率を予測する国際的な計算式です。
2008年にWHO(世界保健機関)とシェフィールド大学(英国)が共同開発し、世界各国の疫学データをもとに設計されています。
日本版FRAXも厚生労働省研究班の協力により開発されており、無料で公開されています。


FRAXは、以下のようなケースで活用されます:

  • 🩺 骨粗鬆症の診断前スクリーニング
  • 🧮 骨密度が正常~軽度低下の人に対する骨折リスク評価
  • 💊 薬物治療の適応を判断する指標として
  • 🧓 高齢者健診や整形外科・内科での予防医療

■ FRAXで予測できる「2種類の骨折リスク」

FRAXでは、以下の骨折の10年以内の発生確率(%)を算出します:

評価項目内容
主な骨粗鬆症関連骨折(Major osteoporotic fractures)脊椎(椎体)・大腿骨近位部・前腕・上腕近位部のいずれか
大腿骨近位部骨折(Hip fracture)歩行障害や要介護に直結する重大な骨折

■ FRAXで入力する項目(11項目)

FRAXは、骨密度がなくても使えるのが特徴ですが、大腿骨近位部の骨密度(BMD)があるとより正確に評価できます。

項目内容
年齢40~90歳の範囲で入力可能
性別男性 or 女性
体重・身長BMIを自動計算
既往歴脆弱性骨折歴、親の大腿骨骨折歴
喫煙現在喫煙しているかどうか
ステロイド使用3ヶ月以上の全身性ステロイドの服用
関節リウマチ有無(自己申告)
二次性骨粗鬆症糖尿病、肝疾患、甲状腺疾患など
飲酒週3単位(30g/日以上)の過剰飲酒
大腿骨BMD(任意)DXA法でのTスコアまたはg/cm²

■ 日本でのFRAXの使い方と治療開始の目安

**日本骨粗鬆症学会ガイドライン(2022年版)では、以下の基準でFRAXの活用が推奨されています:

✅ 骨密度70~80%未満の人(骨量減少)において:

FRAXのリスク(10年予測)治療方針
主な骨折リスク ≧15%薬物治療の開始を推奨
大腿骨骨折リスク ≧3%薬物治療の開始を推奨

→ 骨密度が診断基準に満たない場合でも、FRAXスコアが高ければ「骨粗鬆症相当」として治療可能。


■ FRAXの利点と限界

👍 メリット

  • 骨密度測定なしでも使用可能(診療のハードルが下がる)
  • 高齢者の転倒や骨折リスクを数値化できる
  • 患者さんへの説明・モチベーションにも使いやすい

⚠️ 限界

  • 転倒歴や歩行能力などは評価項目に含まれていない
  • 薬剤の服用歴や栄養状態、骨質は反映されない
  • 骨密度があった方が精度は高い(可能ならBMDの入力を)

■ 日本語版FRAXツールはこちら(外部サイト)


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